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1996-08-24
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4KB
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83 lines
アスベストと受動喫煙の発ガンリスクの比較
松崎道幸
アスベスト粉塵が肺癌や胸膜の腫瘍を発生するリスクは、アスベストにさらさ
れ始める年令が若く、アスベストにさらされる期間が長く、アスベスト繊維濃度
が高いほど高くなります。低濃度のアスベストの健康影響を予測するためにいろ
いろなモデルに基づいた多くの推計が発表されています。ここではEnterline氏
の1983年に発表した推計値を基礎に、ほかの研究者の試算を参考にして作った表
を示します。
もともとEnterline氏の推計値はアスベストによる肺癌の発生のみを計算した
ものです。アスベストは悪性腫瘍として肺癌と胸膜中皮腫の両方を発生させるた
め、受動喫煙と公平にリスクの比較を行うためには、肺癌と胸膜中皮腫を合計し
た発生数を計算する必要があります。生まれたときからアスベストにさらされた
場合、胸膜中皮腫は肺癌の4から10倍の発生率と報告する研究者が多いことから、
肺癌発生数を5倍あるいは10倍した数をアスベストによる悪性腫瘍発生数としま
した。この表は、百万人の人が生まれたときから一生涯アスベストに暴露された
と仮定し、その中から何人の悪性腫瘍(肺癌あるいは胸膜中皮腫)患者が発生する
かを濃度別に示したものです。
┌───────────────────────────────────┐
│ アスベスト濃度と悪性腫瘍発生のリスク │
│ │
│ アスベスト線維濃度 肺癌発生数 悪性腫瘍発生数 │
│ (>5μm、本/cc)(百万人・生涯)(肺癌×5〜10) │
│ ↑0.00006 2.08 10.4-20.8 │
│ │ │
│一般環境濃度│0.0002 4.606 23.3-46.06 │
│住宅地(日本)│ │
│(資料2参照) ↓0.001 23.03 115.2-230.3 │
│ 0.002 46.06 230.3-460.6 │
│ │
│立入禁止(英) 0.01 230.3 1152-2303 ↑ │
│ (資料3参照)│受動喫煙による肺癌 │
│内装破損室内 0.02 460.6 2303-4606 │(1000-5000/百万・生涯)│
│ ↓ │
│石綿作業上限 0.1 2303.0 11515-23030 │
│(現在) │
│ 0.2 4606.0 23030-46060 │
│ │
│ 2.0 46060.0 ……… │
│ │
│石綿作業(昔)10〜100(5万〜20万) ------→能動喫煙による肺癌 │
│ (米18万、日9万/百万・生涯) │
└───────────────────────────────────┘
この表で一番注目していただきたいところは、アスベスト濃度0.01〜0.02本
/ccの行です。この濃度は吹き付けアスベストが破損して相当ひどい状態になっ
たときですが、イギリスの法律では、このアスベスト濃度になった建物は立入禁
止とされます。この濃度の室内で生まれ、一生暮らし続けると、百万人中1千か
ら5千人近くのガン患者が発生する見通しです。わが国のアスベスト問題の権威
である大阪成人病センター森永謙二氏も、0.01本/ccのアスベストを生まれた時
から一生吸い込むと、百万人の中から男性で2100人、女性で1800人が悪性腫瘍(
肺癌+胸膜中皮腫)を発病すると試算しています。
ところが、夫婦間でみられる程度の受動喫煙でも同じ数の患者が発生します。
夫婦間程度の受動喫煙でも、生涯リスクとして1千人中1から5人(つまり百万人か
ら1千から5千人)の悪性腫瘍(=肺癌)が発生します。これはちょうどアスベスト濃
度0.01〜0.02本/ccにおける発生患者数の範囲と一致するのです。
このように夫婦間で普通にみられる受動喫煙程度で、立入禁止レベルのアス
ベスト汚染の発生している室内に一生暮らしたときと同じくらい悪性腫瘍が発生
するというのはウソでも誇張でもありません。
【MEMO】カリフォルニア大学J.E. フィールディング博士は、世界的に有名な医
学雑誌「New England Journal of Medicine」に掲載された論文「受動喫煙の健
康影響」(1988年、1452-1460ページ)でこう語っている:「.. 受動喫煙により肺
癌のリスクが1.2倍増加するということは、生涯リスクとして、1000人に1人が余
計に肺癌になることを意味する。これは、アスベストを使用した建物の屋内気中
に通常存在する量のクリソタイル(注:アスベストの種類名)を20年間吸い続けた
場合の肺癌の罹患リスクの約100倍以上の危険度なのである」
─────────────────────────────────────
【資料2】 【資料3】
日本国内アスベスト濃度分布(1985年環境庁) 0.01本/cc暴露による生涯リスク
(大阪成人病センター森永謙二氏)
地域 石綿濃度(本/cc)
内陸山間地域 0.00043 肺癌 悪性中皮腫 計
住宅地域 0.00104 男 540 1560 2100
商業地域 0.00142 女 160 1640 1800
内陸工業地域 0.00209 <対百万人>
廃棄物処分工場周辺 0.00316
解体ビル周辺 0.00324
蛇紋岩採石場周辺 0.02-0.07
石綿工場周辺 0.0015-0.0393
(最大0.378)
─────────────────────────────────────
「こどもとタバコ」第3号(1990年6月20日発行)より改変